夜の「ギリッ」に気づいたとき ―歯ぎしり・食いしばりのお話―

寝ているあいだの歯ぎしりや、仕事中の強い食いしばりに気づいた主人公が、検査と説明を通して原因を知り、マウスピースやセルフケアで少しずつラクになっていくまでを描いたストーリーです。

ストーリー

ある朝、目が覚めると奥歯のあたりがじんわりとだるく、こめかみも重たい感じがしました。「なんだか最近、朝から疲れてるな…」そうつぶやきながら、鏡の前であくびをすると、顎の筋肉がキュッとこわばるのを感じます。

その日の夜、家族から「たまに寝てるときギリギリ音してるよ」と言われてびっくり。「えっ、私そんなことしてるの?」自分ではまったく覚えがなく、少し不安になりました。

仕事の日は、気づくと奥歯をグッと噛みしめていることも多く、「集中しているときほど、歯に力が入ってるかも…」と感じるようになります。ふと頬に手を当てると、エラの部分の筋肉が固く張っていました。

インターネットで「歯ぎしり 食いしばり」と検索すると、「顎関節症」「歯のすり減り」「知覚過敏」など、こわい言葉が目に入ってきます。「このまま放っておいて大丈夫なのかな…?」と心配になり、歯科医院へ相談してみることにしました。

診療室では、まずお口の中のチェックから始まります。先生がライトを当てながら、「ここ、歯の表面が少しすり減っていますね」「ほっぺの内側、少し噛み跡がついています」と、鏡を見せてくれました。自分では気づいていなかったサインに、思わずドキッとします。

次に、顎の動きをゆっくり確認します。大きく口を開けたり、左右に動かしたりしながら、「痛みはありますか?」「カクッと音はしますか?」と丁寧にヒアリング。首や肩のこりについても質問され、「全部つながっているんだ」と実感しました。

モニターには、歯ぎしり・食いしばりのイラストや模型が映し出されます。「眠っているあいだや、日中のストレスで無意識に力が入ることで、歯や顎の筋肉に負担がかかります」と説明を受け、原因が少しずつ見えてきました。

対策として、就寝時に使うマウスピース(ナイトガード)を作ることになりました。型どりをして数日後、自分の歯にぴったり合う透明なマウスピースが完成。「これをつけて寝ることで、歯どうしが直接ぶつからないように守っていきます」と教わります。

同時に、日中のセルフケアもスタート。「パソコン作業のときは、上下の歯を離して唇を軽く閉じるのが基本ポジションですよ」「力が入っているなと気づいたら、いったん深呼吸しましょう」といった具体的なアドバイスをもらいました。

数週間たつと、朝の顎のだるさが前よりも軽くなっていることに気づきます。こめかみの重さも少しずつ減り、「前よりぐっすり眠れているかも」と感じる日が増えてきました。歯のすり減りをこれ以上進ませないためにも、「続けていこう」と気持ちが前向きになります。

定期的なチェックで、先生と一緒にマウスピースの状態や歯の変化を確認しながら、「いいペースでコントロールできていますよ」と声をかけてもらえると、がんばってきてよかったとホッとしました。

歯ぎしり・食いしばりは、自分では気づきにくいクセですが、早めに相談して対策を始めることで、歯や顎を守ることができます。「朝のだるさが減っただけで、こんなに一日がラクなんだ」と実感しながら、今日も軽やかな気持ちで一日をスタートさせます。