ポッコが秋の田んぼで収穫を手伝いながら、お米と自然の恵みに「ありがとう」を伝えるまでのお話です。
秋の森をぬけると、まぶしい光が広がっていました。そこには、金色の海みたいなたんぼが広がっていて、ポッコは思わず目をまるくしました。「わぁ……お米って、こんなにきれいなんだ。」
ざわざわと、やさしい風が吹きます。ポッコのほっぺに稲の穂がふれて、くすぐったい感じがしました。「みんな、風とお話してるみたいだね。」と、ポッコはうれしそうにつぶやきます。
しゃっ、しゃっ。しゃっ、しゃっ。田んぼの中から心地よい音が聞こえてきます。おじいさんとおばあさんが、鎌で稲をかりとっていました。「お米をかりとってるんだよ。」と、ポッコはじっと見つめます。
「ぼくもやってみたい!」ポッコは小さな手で、稲の束をよいしょっと持ち上げました。ふわっと甘いにおいがして、心がぽかぽかになりました。手の中の稲が、とても大切な宝物のように感じられます。
夕方になって、空がオレンジ色に染まりました。ポッコはかかしを見上げて言います。「ずっとここで見てたの? たいへんだったね。」かかしは風にゆれて、「うん」と言ったような気がしました。
夜の田んぼは、しんと静かです。虫たちの声が、まるで歌のように響きます。ポッコは、昼間に見た金色の田んぼを思い出しながら、空を見上げました。そこには、まんまるい月がやさしく光っていました。
月の光をあびて、かかしの影が長くのびていきます。ポッコはそっと寄り添って、「おつかれさま、かかしさん。」と声をかけました。風がそっと吹いて、かかしの帽子がかすかにゆれます。
山のむこうから、朝の光がのぞきました。干された稲がきれいに並び、また金色にかがやきます。ポッコはマフラーを直して、「今日もいい日になりそうだね。」とほほえみました。
おじいさんがポッコにおにぎりをくれました。「昨日の田んぼでとれたお米だよ。」ひとくち食べると、ほっこり、あまくてやさしい味が口いっぱいに広がります。「おいしいなぁ。」とポッコは目を細めました。
青空の下、ポッコは田んぼに向かって大きく手をふりました。「おいしいごはんを、ありがとう。」ざわざわ――風が答えるように稲穂が揺れます。金色の波が、ポッコの心の中にもやさしくゆれていました。